近年、遠方にお住まいのご親族やご友人も故人様をお見送りできるよう、葬儀のライブ配信が増えてまいりました。故人様が生前お好きだった曲や、心温まるBGMを流して、より思い出深いお見送りの場にしたいとお考えのご遺族様も多いことでしょう。
しかし、実はこのBGM利用には「著作権」という大切な問題が潜んでいます。せっかく準備したBGMが配信中に突然ミュートされたり、最悪の場合、配信そのものが中断されてしまうケースも少なくありません。このような予期せぬトラブルは、故人様への想いを届ける大切な場を損ねてしまうことにもなりかねません。
この記事では、葬儀のライブ配信でBGMが消されてしまう原因と、トラブルなく安全にBGMを利用するための具体的な対策を、プロのWebライターとして分かりやすく解説いたします。故人様への最後のメッセージを、スムーズに、そして心ゆくまでお伝えできるよう、ぜひご一読ください。
葬儀ライブ配信でBGMが消される原因とは?(著作権の基本)
なぜ葬儀のライブ配信でBGMがミュートされたり、消されたりするのでしょうか。その原因は「著作権」にあります。まずは、著作権の基本的な仕組みから理解していきましょう。
著作権保護の対象となる音楽とは
私たちが日常で耳にするほとんどの音楽作品(歌、インストゥルメンタル問わず)は、著作権法によって保護されています。具体的には、作曲者、作詞者、編曲者などが持つ「著作権」と、レコード会社やアーティストなどが持つ「著作隣接権」の2種類が主な保護対象です。
これらの権利は、音楽の無断での複製、演奏、放送、公衆送信(インターネット配信も含む)などを禁じています。つまり、故人様がお好きだった市販のCDや配信サービスで購入した楽曲を、著作権者の許可なくライブ配信で使用することは、著作権侵害にあたる可能性があるのです。
YouTubeやZoomの自動検出システムと仕組み
YouTubeやZoomといった配信プラットフォームは、著作権侵害を防止するために高度な自動検出システムを導入しています。
- YouTubeの「Content ID」: 世界中の著作権者が登録した数百万もの楽曲データと、アップロードされた動画の音源を照合します。ライブ配信中であっても、著作権保護された音楽が検出されると、リアルタイムで音声がミュートされたり、配信が停止されたりすることがあります。
- Zoomの著作権フィルター: Zoomも同様に、配信中の音声に著作権保護された音楽が含まれていないかを検出する仕組みを持っています。特に、背景音楽として市販曲を流す設定にしている場合、検出されやすい傾向があります。
これらのシステムは非常に高性能であり、たとえ短い時間であっても、著作権保護された楽曲を識別し、自動的に対応を行うよう設計されています。
著作権侵害のリスクとプラットフォームの対応
著作権侵害が検出された場合、プラットフォームからは以下のような対応が取られる可能性があります。
- 音声のミュート: 配信中のBGM部分のみがミュートされ、無音になることがあります。
- 配信の中断・停止: ライブ配信自体が強制的に中断されたり、停止されたりする場合があります。
- アーカイブ動画の削除: 配信終了後に残したアーカイブ動画が削除されることがあります。
- 収益化の停止・アカウントの制限: 繰り返し著作権侵害があった場合、アカウントの収益化機能が停止されたり、最悪の場合、アカウントが凍結されたりするリスクもあります。
- 法的措置の可能性: 極めて稀なケースではありますが、悪質な著作権侵害と判断された場合には、著作権者から損害賠償請求などの法的措置を取られる可能性もゼロではありません。
葬儀という特別な場であっても、著作権法は適用されます。故人様への敬意を払うためにも、著作権の問題には十分な注意を払い、適切な方法でBGMを利用することが大切です。
BGMが消されないための具体的な対策【合法的な方法】
それでは、著作権の問題をクリアし、安心してライブ配信でBGMを使用するための具体的な対策を見ていきましょう。合法的な方法を選ぶことで、トラブルなく故人様をお見送りできます。
著作権フリー音源・商用利用可能なBGMの利用
最も手軽で安全な方法の一つが、著作権フリー音源や商用利用可能なBGMを利用することです。
- 著作権フリー音源: 著作権が消滅している、または著作権者が権利を放棄している音源です。
- 商用利用可能なBGM: 著作権者が、特定の条件(クレジット表記など)のもとで、商用利用を含む幅広い利用を許可している音源です。
これらの音源は、インターネット上に多数の提供サイトがあります。サイトごとに利用規約が異なりますので、必ず「ライブ配信での利用が可能か」「クレジット表記は必要か」などを確認してから利用しましょう。無料で利用できるものも多く、選択肢も豊富です。
著作権管理団体(JASRAC等)への許諾申請
故人様が生前お好きだった市販曲や、特定のアーティストの楽曲をどうしても使用したい場合は、著作権管理団体への許諾申請が必要です。日本では、JASRAC(日本音楽著作権協会)が多くの楽曲の著作権を管理しています。
ライブ配信で市販曲を利用する場合、JASRACへの許諾申請が必要となります。手続きには費用がかかり、また申請から許諾までにある程度の時間が必要となる場合があります。葬儀の日程に間に合うよう、早めに問い合わせて手続きを進めることが重要です。ライブ配信と、その後のアーカイブ公開では、それぞれ別の許諾が必要となる場合もありますので、詳細を確認するようにしてください。
故人や遺族が作成したオリジナル楽曲の使用
もし故人様が作曲されたり、ご遺族が故人様への想いを込めて作成されたりしたオリジナル楽曲がある場合は、それをBGMとして利用することができます。この場合、著作権は故人様またはご遺族に帰属するため、外部の許諾は不要です。
故人様の個性や思い出を反映したオリジナル楽曲は、参列される方々にとっても特別な意味を持つBGMとなるでしょう。ただし、その楽曲が他者の著作権を侵害していないか(例えば、既存曲のメロディをそのまま使用していないかなど)は念のため確認しておきましょう。
BGMなしで配信する、または生演奏に切り替える
著作権に関する一切の心配をなくしたいのであれば、BGMなしで配信するか、生演奏に切り替えるのが最も確実な方法です。
- BGMなし: 故人様の写真や映像を流す際も、無音で進行させます。ナレーションやメッセージを重視する場合に適しています。
- 生演奏: ピアニストやバイオリニスト、演奏家の方に依頼し、その場で演奏してもらう方法です。演奏自体には著作権は発生しません(ただし、演奏する楽曲自体が著作権保護されている場合は、別途「演奏権」の許諾が必要となる場合があります。葬儀社や演奏家に相談し、許諾済みの楽曲を選ぶか、著作権フリーの楽曲を演奏してもらうのが安全です)。生演奏は、故人様への敬意を表す非常に格式高い演出となり、参列者の心にも深く響くでしょう。
配信プラットフォームごとの注意点と設定
利用する配信プラットフォームによって、著作権に関するポリシーや推奨される設定が異なります。ここでは、主要なプラットフォームであるYouTubeとZoomに焦点を当てて解説します。
YouTubeでのライブ配信(コンテンツIDと著作権ポリシー)
YouTubeは世界最大の動画共有プラットフォームであり、その著作権保護システム「Content ID」は非常に厳格です。
- リアルタイム検出: ライブ配信中に著作権保護されたBGMが流れると、Content IDが即座に検出し、音声がミュートされたり、配信が中断されたりする可能性があります。
- アーカイブ動画: ライブ配信が無事に終了しても、そのアーカイブ動画をYouTubeに残す場合、再度Content IDによるチェックが行われます。この際、著作権侵害が検出されると、動画の一部または全体の音声がミュートされる、動画が削除される、または動画の収益が著作権者に渡るなどの措置が取られます。
- 対策: YouTubeで葬儀をライブ配信し、BGMを使用したい場合は、前述の「著作権フリー音源」の利用が最も安全です。市販曲を使用する場合は、必ずJASRACなどから適切な許諾を得て、YouTubeの著作権ポリシーに則って利用する必要があります。
Zoomでのライブ配信(著作権フィルターと推奨される代替案)
Zoomは会議ツールとして広く利用されていますが、葬儀のライブ配信にも使われることがあります。Zoomも著作権保護の観点から、配信中のBGMに注意が必要です。
- 著作権フィルター: Zoomには、著作権保護された音楽の利用を制限するためのフィルター機能が内蔵されています。特に、PCやデバイスから直接音声を共有する設定にしている場合、BGMが検出されやすい傾向があります。
- 推奨される代替案:
- BGMなし: 最も確実なのは、ZoomでBGMを流さないことです。
- 外部スピーカー利用: 物理的にBGMを流すデバイス(CDプレイヤーなど)をZoomのマイクから拾う形であれば、検出されにくい可能性はありますが、音質が悪くなることや、完全に検出されない保証はありません。
- 著作権フリー音源: Zoomの「コンピュータのサウンドを共有」機能を使ってBGMを流す場合でも、著作権フリー音源を利用することでリスクを回避できます。
- 注意点: Zoomは会議に特化したツールのため、音楽配信に最適化されているわけではありません。高音質でのBGM配信を求める場合は、YouTube Liveなど、よりメディア配信に特化したプラットフォームの利用を検討するのも一つの方法です。
葬儀ライブ配信でBGMを安全に利用するためのQ&A
ここからは、葬儀のライブ配信でBGMを利用する際によくある疑問にお答えします。
故人が生前に好きだった市販曲を流したい場合は?
故人様への深い想いから、生前に好きだった市販曲を流したいというお気持ちはよく理解できます。この場合、前述の通り、著作権管理団体(JASRACなど)への利用許諾申請が原則として必要となります。
手続きには時間と費用がかかりますので、葬儀の準備と並行して早めにJASRACのウェブサイトなどで詳細を確認し、問い合わせを行うことをお勧めします。もし許諾が得られなかったり、手続きが間に合わなかったりする場合は、著作権フリーの楽曲の中から故人様のイメージに合うものを選ぶ、またはオリジナル楽曲を作成するなど、代替案を検討することが賢明です。
配信後にアーカイブ動画を残したい場合は?
ライブ配信だけでなく、後日視聴できるようアーカイブ動画を残したい場合、著作権に関する注意点がさらに増えます。
ライブ配信でのBGM利用が許可されても、アーカイブとして動画を公開することには、別途「複製権」や「公衆送信権」などの許諾が必要となる場合があります。特にYouTubeなどのプラットフォームでは、アーカイブ動画に対してより厳格な著作権チェックが行われるため、ライブ配信時には問題がなくても、アーカイブ化した途端に音声がミュートされたり、動画が削除されたりするケースが頻繁に発生します。
アーカイブ動画を残すことを前提とするのであれば、著作権フリーのBGMを利用するのが最も安全で確実な方法です。市販曲を利用する場合は、ライブ配信とアーカイブ公開の両方について、著作権管理団体からの許諾を得る必要があります。事前に配信プラットフォームの規約もよく確認し、トラブルを未然に防ぎましょう。
まとめ:故人への想いを届けるための賢いBGM選択
葬儀のライブ配信でBGMを利用する際、著作権の問題は避けて通れない大切な課題です。故人様への想いを込めたBGMが、予期せぬトラブルで中断されてしまっては、ご遺族様や参列される方々にとっても残念な結果となってしまいます。
この記事でご紹介したように、著作権の基本を理解し、著作権フリー音源の利用、著作権管理団体への許諾申請、オリジナル楽曲の使用、またはBGMなしや生演奏への切り替えといった合法的な対策を取ることで、安心してライブ配信を行うことができます。
故人様への最後のメッセージを、心ゆくまで、そしてスムーズにお伝えするためにも、賢いBGM選択を心がけましょう。ご遺族様が安心して故人様を追悼できる環境を整えることが、何よりも大切です。