卒業スライドショーは、子どもたちの成長や仲間との思い出を振り返り、感動を分かち合う大切なイベントです。心温まる映像に欠かせないのが、感動を一層深めるBGM。お気に入りの市販曲を使いたいと考える方も多いでしょう。
しかし、そこで立ちふさがるのが「著作権」の問題。「勝手に使ったら著作権違反になるの?」「どんな手続きをすれば良いの?」といった疑問や不安を抱えている方も少なくありません。
この記事では、卒業スライドショーで市販曲を使う際に知っておくべき著作権のルールと、安心して利用するための申請方法、さらに著作権問題を回避する代替策まで、Webライターがプロの視点から分かりやすく解説します。感動的なスライドショーを、著作権の心配なく制作できるよう、ぜひ最後までお読みください。
卒業スライドショーの音楽著作権、なぜ問題になる?
著作権とは?スライドショーで問題になるケース
著作権とは、小説、音楽、絵画、写真、プログラムなど、思想や感情を創作的に表現した「著作物」を保護するための権利です。著作者が持つ権利であり、著作物を無断で利用されることを防ぎます。
音楽における著作権は、主に以下の権利を含みます。
- 複製権:楽曲をコピーしたり、録音・録画したりする権利
- 演奏権・上演権:楽曲を公衆に演奏・上演する権利
- 公衆送信権:楽曲をインターネットなどで送信する権利
- 頒布権:複製物を公衆に譲渡・貸与する権利
卒業スライドショーで市販曲を使う場合、これらの権利が問題になる可能性があります。具体的には、スライドショーに楽曲を「録音・録画(複製)」し、それを「上映(上演)」したり、DVDにして「配布(頒布)」したり、インターネットで「公開(公衆送信)」したりする行為が、著作権者の許可なく行われると著作権侵害にあたる可能性があるのです。
「謝恩会」と「DVD配布」で著作権の扱いが変わる理由
卒業スライドショーを「謝恩会で上映するだけ」の場合と、「DVDにして参加者に配布する」場合では、著作権の扱いが大きく異なります。これは、著作権が及ぶ範囲と、行われる行為の種類が違うためです。
- 謝恩会での「上映のみ」の場合:
この場合、主に行われるのは「上演(演奏)」です。多くの場合、営利目的ではなく、特定の場所で、限られた関係者に向けて行われるため、JASRAC(一般社団法人 日本音楽著作権協会)と包括契約を結んでいる施設(学校、ホテルなど)であれば、追加の許諾申請が不要なケースがあります。ただし、これはあくまで「上演」に関するものであり、スライドショー自体に楽曲を「複製」する行為については別途検討が必要です。
- DVD配布など「複製・頒布」の場合:
DVDを作成して配布する行為は、楽曲を「複製」し、その複製物を「頒布」することにあたります。これは「私的利用」の範囲を超え、著作権者の利益に直接影響するため、必ず著作権者からの許諾が必要になります。たとえ少人数への配布であっても、無断で行うと著作権侵害となる可能性が高いです。
このように、利用の目的や方法によって必要な手続きが変わるため、ご自身のケースに合わせて確認することが重要です。
【ケース別】市販曲をスライドショーで使う際の著作権ルールと注意点
謝恩会など「上映のみ」の場合のルールと注意点
謝恩会や卒業式で、その場でスライドショーを上映する(DVDを配布しない)ケースの場合、以下の点に注意が必要です。
- 営利目的ではないこと:参加者から料金を徴収しないなど、営利を目的としないことが条件です。
- 聴衆から料金を徴収しないこと:入場料などを徴収しない場合が該当します。
- 特定の場所での上演であること:不特定多数がアクセスできるインターネット上での公開ではないことが前提です。
多くの学校やホテルなどの施設は、JASRACと「演奏(上演)に関する包括契約」を結んでいます。この場合、その施設内でJASRAC管理楽曲をBGMとして流したり、スライドショーを上映したりする分には、個別の利用許諾申請は不要なことが多いです。ただし、施設が契約している範囲や条件がありますので、必ず事前に学校の担当者や施設の管理者にご確認ください。
また、スライドショー自体に楽曲を組み込む「複製」行為については、上映のみの場合でも原則として許諾が必要です。ただし、JASRACが定める「学校教育利用」の範囲内であれば、一部例外もあります。詳細についてはJASRACのウェブサイトをご確認いただくか、直接問い合わせるのが確実です。
DVD配布など「複製・頒布」の場合のルールと注意点
卒業スライドショーをDVDやBlu-rayディスクに焼いて、参加者や関係者に配布する場合、これは「複製」および「頒布」にあたります。この場合、個別の利用許諾申請が必須となります。
- JASRACへの申請が基本:
ほとんどの市販曲はJASRACが著作権を管理しています。DVDに複製して配布する場合、「録音・録画(ビデオグラム)に関する利用許諾」をJASRACに申請します。
- 費用が発生する:
複製する枚数や楽曲の使用秒数などに応じて、使用料が発生します。
- 無断配布は著作権侵害:
たとえ身内や友人への限定的な配布であっても、無断での複製・頒布は著作権法に違反する行為です。必ず正規の手続きを踏みましょう。
申請手続きには、使用楽曲情報や配布予定枚数などが必要になります。時間に余裕を持って準備を進めることが大切です。
ネット公開(YouTubeなど)の場合のルールと注意点
作成した卒業スライドショーをYouTubeやSNSなどのインターネット上に公開する場合、これは「公衆送信」にあたります。この場合も、原則として著作権者からの許諾が必要です。
- プラットフォームの規約を確認:
YouTubeなどの動画共有サービスは、JASRACなどと包括契約を結んでいる場合があります。この場合、JASRAC管理楽曲であれば、ユーザーが個別に申請しなくても利用できることがあります。ただし、収益化の有無や、楽曲によっては利用できないケースもありますので、各プラットフォームの規約をよく確認しましょう。
- 楽曲によっては制限がある:
JASRAC管理楽曲であっても、レコード会社や音楽出版社が独自に利用を制限している場合があります。また、JASRAC以外の団体が管理している楽曲や、外国の楽曲は、個別に権利者への連絡が必要になることもあります。
- 「限定公開」でも注意:
URLを知っている人だけが見られる「限定公開」であっても、不特定多数がアクセスできる状態であれば「公衆送信」とみなされる可能性があります。
インターネット公開は、世界中の人がアクセスできるため、著作権侵害のリスクも高まります。不安な場合は、後述の著作権フリー音源の利用を検討することをおすすめします。
市販曲の利用許諾申請方法と費用
JASRACへの申請手続きの流れと必要情報
市販曲の多くはJASRACが著作権を管理しています。DVD配布などで楽曲を複製・頒布する場合のJASRACへの申請手続きの一般的な流れは以下の通りです。
- JASRACのウェブサイトにアクセス:
JASRACの公式サイトで、「利用許諾」のページを探します。
- 利用目的の選択:
「録音・録画(ビデオグラム)」など、ご自身の利用目的に合った申請区分を選択します。
- 必要情報の入力・申請:
オンライン申請フォームに、以下の情報を入力します。
- 利用目的(卒業スライドショーDVD作成・配布など)
- 使用楽曲リスト(曲名、アーティスト名、JASRAC作品コードなど)
- 使用秒数
- 複製・配布予定枚数
- 利用期間
- 申請者の氏名、連絡先など
必要に応じて、スライドショーの企画書や台本などの提出を求められることもあります。
- 使用料の算定と支払い:
入力された情報に基づき、JASRACから使用料の見積もりが提示されます。内容を確認し、問題なければ支払いをします。
- 許諾書の受領:
支払い後、JASRACから利用許諾書が発行され、正式に楽曲を利用できるようになります。
申請はオンラインで完結できる場合が多いですが、不明な点があればJASRACの窓口に問い合わせるのが確実です。
申請にかかる費用と期間の目安
JASRACへの申請にかかる費用は、使用する楽曲の数、使用する秒数、複製する枚数、利用目的などによって大きく変動します。
- 費用の目安:
例えば、卒業スライドショーDVDを数十枚作成する場合、数千円〜数万円程度の使用料が発生することが一般的です。具体的な金額は、JASRACのウェブサイトにある「利用料規程」で確認できるほか、申請時に見積もりが提示されます。
- 期間の目安:
申請から許諾書の受領までは、通常数週間から1ヶ月程度かかることがあります。特に卒業シーズン前は申請が集中しやすいため、さらに時間がかかる可能性も考慮し、余裕を持って2〜3ヶ月前からの準備をおすすめします。
個別楽曲の権利者への連絡が必要なケース
JASRACは多くの楽曲を管理していますが、中にはJASRACが管理していない楽曲や、JASRACの管理範囲外の利用(例えば、楽曲の編曲や歌詞の変更など)もあります。このような場合は、JASRACではなく、楽曲の著作権を持つ音楽出版社やレコード会社、または著作者本人に直接連絡を取り、利用許諾を得る必要があります。
特に、海外の楽曲や、インディーズアーティストの楽曲などでは、JASRACが管理していないケースがあります。JASRACの作品データベースで検索し、管理状況を確認することが第一歩です。もしJASRACで検索できない場合は、その楽曲の音楽出版社やレコード会社を特定し、ウェブサイトなどを通じて問い合わせてみましょう。
著作権問題を回避する代替策・おすすめの方法
著作権フリー・ロイヤリティフリー音源の活用
著作権の心配なく、安心してスライドショーの音楽を選びたいなら、著作権フリーやロイヤリティフリーの音源を活用するのがおすすめです。
- 著作権フリー音源:著作権者の許可なく自由に利用できる音源です。ただし、完全に「何でもあり」というわけではなく、提供サイトごとの利用規約(商用利用の可否、クレジット表記の要不要など)を確認する必要があります。
- ロイヤリティフリー音源:一度購入すれば、追加の支払いなしに何度でも利用できる音源です。購入費用はかかりますが、その後は著作権の心配なく利用できます。
おすすめのサイト例:
- DOVA-SYNDROME(無料で幅広いジャンルのBGM・効果音を提供)
- OtoLogic(無料で高品質なBGM・効果音を提供)
- Epidemic Sound(有料でプロ品質のロイヤリティフリー楽曲を提供)
これらの音源は、利用規約をしっかり守れば、著作権侵害の心配なく卒業スライドショーを制作できます。
オリジナル曲や演奏を利用する
もし、音楽制作のスキルがある方や、楽器演奏が得意な方がいらっしゃるなら、オリジナル曲を作成したり、既存曲を自分たちで演奏・歌唱したりするのも素晴らしい方法です。
- オリジナル曲:
世界に一つだけの、特別なスライドショーになります。著作権の問題も発生しません。子どもたちの歌声や、先生方の演奏などをBGMにすれば、より一層思い出深い作品になるでしょう。
- 演奏・歌唱:
既存の楽曲を「自分たちで演奏・歌唱」する分には、その「演奏」自体の著作権は発生しません。ただし、その演奏を「録音・録画」してスライドショーに組み込む場合、原曲の著作権(複製権)が発生します。そのため、JASRACへの申請が必要になることがあります。ただし、歌詞を表示しない、短尺での利用など、特定の条件によっては申請が不要な場合もありますので、確認が必要です。
許諾済みBGM・楽曲提供サービスを利用する
ブライダル業界やイベント業界向けに、著作権処理済みのBGMや楽曲を提供しているサービスも存在します。これらのサービスは、特定の用途(例:結婚式での利用、イベントでの利用など)に特化しており、利用料を支払うことで、安心して市販曲に近いクオリティの楽曲を使用できます。
- メリット:
著作権処理が完了しているため、個別の申請手続きの手間が省けます。楽曲のクオリティも高く、安心して利用できます。
- デメリット:
有料サービスであり、費用がかかります。提供される楽曲のラインナップも、市販されている全楽曲から選べるわけではありません。
「ISUM(アイサム)」などが代表的なサービスです。卒業スライドショーの制作会社や、イベント企画会社が利用しているケースもありますので、検討してみる価値はあります。
よくある質問(Q&A)
学校を通して申請するべき?
はい、まずは学校の担当者(先生や事務の方)に相談することをおすすめします。
- 学校によっては、JASRACと包括契約を結んでいる場合があり、上映のみであれば個別の申請が不要なケースがあります。
- 学校が過去にスライドショー制作で利用許諾を得た経験があるかもしれません。
- 学校が窓口となって申請手続きを進めてくれる可能性もあります。
個人的な判断で進める前に、まずは学校の方針や経験を確認することが賢明です。
歌詞が表示される場合は?
歌詞も楽曲と同様に、著作物として保護されています。スライドショーで楽曲の歌詞を画面に表示させる場合、これは「複製権」や「公衆送信権(インターネット公開の場合)」、「上映権」などが関わってきます。
BGMとして楽曲を使用する際の許諾とは別に、歌詞の表示についても許諾が必要になる場合があります。JASRACへの申請時に、歌詞の表示についても確認し、必要であれば追加の許諾を得るようにしてください。
家族や友人への限定配布ならOK?
「家族や友人といったごく限られた範囲内での配布なら、私的利用だから大丈夫なのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、著作権法で定められている「私的利用」は、「個人的に、または家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」とされています。DVDを作成して複数人に「配布」する行為は、この「限られた範囲」を超える可能性が高いと判断されることが多いです。
たとえ営利目的でなく、無償での配布であっても、不特定多数への頒布とみなされ、著作権侵害となるリスクがあります。安全を期すなら、限定配布であっても正規の許諾を得るか、著作権フリー音源を利用するべきです。
まとめ:卒業スライドショーの音楽著作権対策は計画的に
卒業スライドショーは、子どもたちの思い出を美しく彩る大切な作品です。その感動を一層深める音楽選びに、著作権の知識は欠かせません。
市販曲を利用したい場合は、利用方法(上映のみか、DVD配布か、ネット公開か)によって必要な手続きや費用が異なります。JASRACへの申請は時間と費用がかかるため、早めの計画と準備が何よりも重要です。
「著作権の申請は複雑で難しい」と感じる方もいるかもしれませんが、今は著作権フリーやロイヤリティフリーの音源、あるいは著作権処理済みの楽曲提供サービスなど、安心して利用できる代替策も豊富にあります。
ぜひこの記事を参考に、著作権のルールを正しく理解し、安心して、そして心に残る最高の卒業スライドショーを制作してください。子どもたちの笑顔と感動のために、素敵な音楽を届けましょう。